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OBからのメッセージ No.44

  • 第15期 金属工学科
卒業年度:1981年(S56年)

  • 第15期 金属工学科
卒業年度:1981年(S56年)

表題

  • 出所して45年

2025/11/04

 

塀の中から出所して45年になります。(No24「堀の中から」も参照)
愛媛県から埼玉県の住宅会社に就職して、埼玉県から茨城県に移り住み、今は滋賀県に単身赴任しています。

 

先日の日刊工業新聞に高専特集がありました。「高専卒業生は社会的に極めて純粋なので入社後1年間はじっくり見てほしい。5年後には中核を担う人材になる」との評価がありました。16歳から20歳という青春時代を塀の中で生活していると純粋培養されるのだと思います。滋賀県立高専の計画も2028年開校を目指して進んでいるようです。学長に就任予定の北村隆行さん(元京大副学長)のお話です。「京都大学の私の研究室に高専出身者がいた。彼は初動が早くその行動力は群を抜いていた。しかもよく勉強する。勉強とともに行動力を育てられるのが高専だと思っている」とありました。AI研究者である東大の松尾豊教授も高専出身者は「考えるよりも先に手を動かす」と評価していました。高専卒業生の良い特徴だと思うので大事にしていきたいと思います。いろいろな意味で手が早すぎて後悔したことも多々あったと思いますが先延ばししないで直ぐに取り掛かる姿勢は大事だと思います。

 

日本の産業界の生産性の低さがよく指摘されます。写真はフィンランドの山林伐採現場です。この機械は一本の立木を約1分で処理します。

 

伐採から枝打ち、直径、材長測定、玉(たま)切(ぎり)(伐倒した原木を所定の長さに輪切りにする作業)、仕分けの処理を行います。伐採と集材を二人一組で一日に150m3切り出します。製材工場まで届けて1500円/m3ということで日本の5倍程度の生産性かと思います。フィンランドの人口は550万人で兵庫県と同じくらいです。その人口で国を支えていくためには生産性を上げる必要があります。女性も男性と同じように働きます。製材工場内にも男性と同じように働いている女性が多くいました。

 

我々日本国民も国に要求するばかりではなく、知恵を出し工夫しながら懸命に働いて生産性を上げていく必要があるかと思います。元英国首相のサッチャ-氏の言葉が紹介されていました。「国家が支出を増やすには国民の貯蓄から借りるか、増税しかない。『公のお金』などない。あるのは『納税者のお金』だけだ」と。日本の政治家もこのことを良く認識して政策に当たってもらいたいと思います。トヨタ生産方式の大野耐一さんが部下に話した言葉が紹介されていました。「最適値や限界値は前提条件を固定した時に決まる。君たちは前提条件を覆すために採用されていると心得よ。」「人も生産設備もお金も少し足りない状態にしておいたほうがいい。そうすれば知恵を出して工夫もする。少し不足する状態にしておくのが管理者の仕事だ。」さすがトヨタさんだと思いました。

 

若い頃は木材仕入れのためヨーロッパやロシアに度々出張しました。いろんなエピソードがありますが、ロシアでは大変な思いをしました。強風と大雨で搭乗予定の飛行機が飛ばないというので鉄道で移動することになった事があります。しかし駅のまわりが冠水していてバスが入れない状況で、スーツケ-スを担いで膝まで水に浸かりながら駅のホームに着きました。日本ではなかなか考えられない経験です。
またある日、蟹を食べさせるので海まで行こうというので、港で水揚げされたばかりの新鮮な蟹を食べることができるのかと期待していました。ところが海辺に着くと、バスに積んであった冷凍蟹を出してきました。それを食べた大半の人がお腹を壊していました。自分の常識では考えられない「もてなし」でした。
また大きな立派なホテルなのにシャワ-浴びている途中でお湯が出なくなり、水シャワ-を浴びることになった事もありました。大変なことが多かったロシアでした。

 

ところで、日本の木材自給率は43%まで回復しています。2002年が18%で最低でした。雨が多い日本は森林を育成する環境に恵まれていて、戦後植林した森林が育ち伐採期になっています。最近の円安で輸入材の価格が上がって、国産材の優位性が出てきています。林業が産業として成り立ち元気になれば地方の活性化に貢献できると思います。発電燃料としての利用も進んでいます。昔は竈(かまど)があって、お風呂も薪で沸かしていたことを思い出します。世界最古の木造建築物と言われる法隆寺は1400年の時を超えて現存しています。RC造やS造では難しいと思います。木造住宅にお住まいの方も多いと思いますが、雨仕舞をしっかりして、床下、壁内の通気を良くして、湿気やシロアリを防げば木造建築物を長持ちさせることができます。

 

「若い時には遊ぶ元気があって、時間もあるのにお金がない、中年になるとお金ができて、まだ元気も残っているのに仕事が忙しくて遊ぶ時間がない、老年になってくるとお金もあって時間もあるのに遊ぶ元気がなくなってくる。」世の中うまくできているものだ、と話されている方がいました。私は、まだまだ元気は残っているつもりですが、遊ぶことは忘れてもう少し働きます。



運営からのコメント

卒業して45年、社会・会社でもかなり多くの事を経験したいまの雑感として、高専の評価がとても高い事、事業を成長させる為に実施する事、ロシア出張で経験した事、木材の可能性などを語ったエッセイです。 言葉の端々に、これまでに為してきた事の自信と誇りが感じられます。ぜひご一読ください。
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